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Prologue
梅雨明け間近の日本武道館に歓声が響く。
全日本学生剣道選手権大会(個人戦)準決勝
第二試合は延長戦にもつれ込み、鍔迫り
合いが続いていた。
背中に赤いリボンをつけた伊藤賢一は
相手の面を返し、胴を打ち抜けた。両者の
気合が響く。拍手が沸き上がった。しかし、
次の瞬間静まりかえる。主審は賢一の
返し面を認めず、相手の面を一本と判断
した。白旗が掲げられた。ざわめく
観客席を無視するかのように終了が
告げられた。
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