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「分かったわよ。あなたに会ったことは誰にも言わない」
私がそう言うと、人魚はホッと安心したように笑った。
「ありがとう。お礼にこれをあげるわ」
人魚が何かを岩の上に置いた。それはホタテのような白い貝だった。
「貝?」
「中に真珠が入っているわ」
「はっ!? 真珠?」
「人間の世界では宝物なんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
助けてもらった上に、宝物までいただくなんて、バチが当たりそうだ。
「それじゃあ、お願いね。約束、忘れないで」
そう言うと、人魚は海の中へと沈んでいく。
「あ、ちょっと!」
私は慌てて呼び止めたが、人魚の姿はもう無く、ただ岩に寄せる波の音だけが残された。
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