人魚の約束

「この真珠は、どこで？」

「……拾いました」

　後日、持てあました真珠を売ろうと宝石店に行ったのだが……。

　出所が不明の良質真珠に、店の人間は訝しげな顔で私を見た。

　まさか、人魚にもらったと言う訳にもいかず……（いや、言ったところで笑われるのがオチ）。私は曖昧に笑って店を出た。

　あの日から、人魚の事は誰にも言っていない。

　約束したというのもあるが、言っても信じてもらえないというのが本当のところだ。

　おとぎ話や神話に登場するような伝説上の生き物が、本当にいるとは誰も思わないだろう。

　でも、この真珠が、あの出会いは現実にあったことだと証明してくれている。

　あの人魚は、今もどこかの海を泳いでいるのだろうか？

　美しい姿の仲間たちと共に――。