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3.自分の本音も 他人の秘密も
次の日、遥介より遅れて、ぎりぎりの時間に登校してきた佐里は、ヘッドホンを付けていなかった。
あれから結局見つからなかったのだろう。
そのせいか、佐里はずっと浮かない表情をしていた。
その日の放課後、遥介は、委員会の集まりに少し顔を出したあと、忙しいときに申し訳ないですが、と頭を下げて、了承を得た上で体育祭の準備を抜けさせてもらった。
佐里の音楽プレイヤーを捜して、遥介は校内をうろうろと歩き回った。
今は佐里と親しい付き合いをしているわけでもないけれど、佐里のあんな様子を見ると、やっぱりほっとけない。
捜して見つかる場所にあればいいのだが……。
何せ、なくなったのは昨日のことだ。
佐里の言うように誰かがプレイヤーを隠したのだとしたら、その人物がすでにプレイヤーを自分の家に持ち帰っていたり、学校の外で捨てたりしているということも考えられる。
そうでなくとも、その人物がプレイヤーを自分の鞄に入れて持ち歩いていたら、こっちにはどうしようもない。
無駄かもしれない、と思いながらも、遥介はしばらくプレイヤーを捜し続けた。
そこへ、同じクラスの女子が声を掛けてきた。
「あ、眉村くん」
「何してんのー、こんなとこで」
「なんか、捜し物?」
女子たちは、いつも仲良さそうに喋っている三人組と、そこに山岸という子を加えた四人だった。
遥介は、小さく笑顔を作って溜め息をついた。
「佐里……樹椎(きしい)の、音楽プレイヤーが、なくなっちゃったらしくてさ」
そう答えると、四人は途端に顔色を変えた。
四人は互いに顔を見合わせて、無言で目配せし合い、それから、中の一人がおずおずと口を開いた。
「えっとお……。あたしら、そのプレイヤーのあるとこ、知ってる……かも?」
「本当?」
遥介は、ただそれだけ聞き返した。
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