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憧れと守りたい人
なんのために拳法なんてやってるのと訊かれることが多い。そんな時私は心身を鍛えるためなんて返したりするのだけど、実際は小さい頃に見たジャッキー・チェンに憧れてというかなりミーハーな理由だったりする。
女の子なのに珍しいねみたいなことを言われるのが嫌だった。女の子がジャッキーが好きだと珍しいの? そんなのっておかしい。
今日も私はそんなモヤモヤを稽古にぶつける。痣ができるし辛いことばかりだけど、そんな憤りを原動力にして、私はずっと拳法を続けてきた。
マイナスの感情も、稽古で汗を流せば消えていく。私にとって拳法は同級生の子たちにとってのおしゃれだとかデートみたいなものだ。
その日、私はもしかしたら今までで一番ともいえる鋭い一撃を放つことができた。今日はいい日だ。そんないい気分で道場を後にした時には、すでに外は夜の暗闇に満ちていた。
「お疲れさん」
先輩が首をまわしながら言う。
「お疲れ様です」
「いい一発だったな」
「ありがとうございます」
「頑張れよ」
駐輪場へ向かう先輩を見送り、私は駅へ向かった。とても気分がよかったので、駅前のレンタルショップでお気に入りのジャッキー映画をレンタルする。
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