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英明はぼくに気付き、猛然とぼくに向かって走ってきて
こぶしを振り上げた。
ぼくは思わずそれを避けた。
英明は勢い余って、螺旋階段の向こう側に飛び出てしまった。
螺旋階段の向こうに太郎が浮かんでいた。
太郎が驚く英明の手を、すっと自分のほうに引き寄せた。
鈍い音が響いた。
下に落ちた英明の頭の部分から赤いものが広がっている。
ぼくはランドセルからノートを取り出して破いた。
そして英明の字を真似て、
「太郎君はぼくが殺しました。ゲームをかしてくれないので
階段でつきとばしたら、下に落ちたのです。
だからぼくは、死をもってそのつみをつぐないます。」
そう書いて、そっと階段の上に置いた。
太郎がぼくに微笑んだ。
「ありがとう」
そう風が言ったのだ。
その次の日、小学4年生の自殺はワイドショーで大々的に取り上げられた。
太郎、ぼくは君の影武者になって
君の仇をとったよ。
ぼくは鏡に向かって言った。
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