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まったく、どうしてまた!僕は、線路に近づいた。だいたい、こんなに簡単に子供が
線路に入れるような状況っておかしいだろ。ここは危険だ。今度JRに連絡しなくては。
「こら、君!昨日も注意したじゃないか。危ないよ。」
僕は、少し強引に手を引きすぎてしまった。
「ごめん。痛かった?でも、君はあんなところにいたら、もっと痛い目に遭うよ?」
僕は少し低い声で男の子を叱った。
「無いの。この子の。」
そう言い、またその男の子は人形を見せる。今度は、首が無かった。
昨日は腕。今日は首。僕の頭の中にある考えが浮かんだ。
この子は普通ではない。
その考えにおよび、僕はお節介とは思いながらも、またその男の子を家まで送った。
「今日は、君のパパとママに会わせてくれないかな。お兄ちゃん、話があるんだよ。」
そうだ。これは親の責任。監督不行き届きだ。だいたい子供が毎日こんな夕暮れまで
一人で線路に入っていることに気付かないのか。これは親によく言って聞かせてもらわねば。
「パパとママは居ないよ。」
男の子から意外な言葉が出てきた。
「え?どこか出かけてるの?君んちは共働き?」
僕の問いかけに何も男の子は答えなかった。
男の子は一言
「さようなら、お兄ちゃん。」
そう言うと、また玄関から家に入って行った。
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