探し物

5/6
前へ
/6ページ
次へ
「ニュースか何かで知ってるのかもしれませんが、そういう酷い冗談は許しませんよ?人の不幸をなんだと思ってるんですか?」 僕には何がなんだかわからない。 「ちょ、ちょっと待ってください。ほんとに、男の子が線路に。」 「そうよ!あの子達は線路で亡くなったの!1年前に。無理心中よ。ご主人が亡くなったのに絶望して、奥さんは子供と一緒に電車に飛び込んだ。翔くんと奥さんは跳ね飛ばされて亡くなった。綾香ちゃんは・・・」 そう言うと女性は感情が高ぶったのか、顔を両手で挟んで涙を流した、 「綾香ちゃんは、体がバラバラに・・・。ほんと、酷い人ね、あなた。」 女性は僕を睨みつけた。 「じゃあ、この家は・・・。」 僕は唾をごくりと飲み込んだ。 「もう1年間ずっと空き家よ。誰も住んでるわけないじゃない!怪しい人ね、警察呼ぶわよ?」 僕はそう大声で叫ばれ、急いでその場を離れ、家路を走った。  そんな、バカな。あの男の子はいったい。あの女性が言っていた、翔くんか? だって、僕は、あの子の手を握ったのだ。確かに、あの子の手を握り、あの子の家まで送った。 僕はその日、まだ信じられなくて、眠れなかった。  次の日、僕は仕事を休むわけにはいかず、その日も仕事を終え、駅から徒歩で家路をたどる。     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加