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探し物
夕暮れ時、僕は徒歩で駅から自宅への帰り道に、とんでもない物を目にしている。
線路内に幼い、小学2年生くらいの子供が入り込んで遊んでいるのだ。
危ねえなぁ。僕は大声を張り上げた。
「そこのボク、危ないよ。電車が来るから。こっちに来なさい。」
僕がそう叫んでもその少年は、その場に呆然と立ち尽くして離れようとしない。
まったく、しょうがねえなあ。僕は、電車が来ないことを確認して男の子のもとに走る。
「ほら、危ないから。線路から離れて。ね、言うこと聞いて!」
男の子は僕を見上げて、悲しそうな目をした。
「でも、落し物を探してるの。妹の。」
妹がいるのか。でも早くここを離れたほうがいい。
僕は無理やり男の子の手を引いた。
「線路に入っちゃだめだよ。いくら落し物したからって。」
だいいち、あんな線路際に落し物だなんて。在り得ないだろう。
電車の窓から投げ捨てない限りは。もしかしたら、電車に乗っていて、
妹が車窓から投げてしまったんだろうか。
「何を落としたの?」
僕は拾うことはできないけど、一応、諦めるように諭そうとした。
「この子の腕。」
そう言いながら、セルロイドの女の子のお人形を見せてきた。
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