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 三人の姉姫の出した案により、急遽出立になったレイレスは厩にいた。  黒毛の艶やかなその鬣を櫛で梳きながら、愛馬の様子を見ていると、藁を踏む音に気づく。  振り返ると、黒髪を肩へ垂らした青年が立っていた。 「本当に一人で大丈夫か?レイレス」  歯をうっすらと見せ、悪戯な微笑みを見せるその男に、レイレスは近付き、その胸を小突く。  レイレスと並ぶと、頭二つは高い爽やかな青年である。 「相変わらず無礼だなヘルバス。一国の主に何言ってる?」 「何が無礼だ。お前も王なら馬の世話くらい下のやつにやらせろ」  ぷっと、レイレスが吹き出すと、釣られたようにヘルバスと呼ばれたその青年も笑った。 「これを渡そうと思っていた。取れ、レイレス。俺の代わりだ」  ヘルバスは言って、胸元から一振りの短剣を差し出した。  銀で獅子らしい装飾の施された見事な剣である。  それを見るなり受け取ろうとした手をレイレスは引き戻した。 「おい。待てよヘルバス、これ、お前の親父の形見じゃないか。今まで一度も触れさせてくれなかった…」 「まー、まー、待て。レイレス。これには理由がある」 「理由?」  
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