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ヘルバスは頷き、レイレスの肩を引き寄せる。
「誰にもいうなよ。これは秘密だ」
レイレスはヘルバスの瞳を見返す。深い青色の瞳。
いつもになく、真剣な双眸がそこにあった。
「お前、俺の出生と混血の話は知ってるだろ」
「当たり前だ。一緒に育ったようなものだからな」
「そうだ。そして、俺の父は人間だ」
「それがどうかしたのか?その短剣と何がある?」
ヘルバスは鞘から剣を引き抜くと、光にかざした。
「俺の父は、まあ、召し上げられるほどの力の持ち主だったが、それだけじゃなかったんだ」
「なんだ?」
「…人間の中に、とある有力な騎士団があったらしい。だが、そいつらは表には出ない。影に隠れるように動く。名は知らないが…人間の世界でも知る者は少ないという」
「で?それが、その剣がその騎士団の団員である証拠、とでもいうんだろ?」
ヘルバスは、大きな瞳をさらに大きくした。
「なあんで、最後まで言わせてくれないんだよ!お前っていつもそう!」
がっくりと、肩を落としたヘルバスを見ながら、レイレスは笑った。
「わかりやすいんだよ。で?なんでそんなに大切な剣を俺に託す?」
「託すんじゃない。お前を守るんだ」
不意に、顔を上げたヘルバスの表情が真剣なものにすり替わっていた。
「守る?」
「ああ。持っていれば、何のことかお前なら気付くはずだ」
「?物騒だな。ただの旅行だっていうのに」
「いいから!もって行け!」
短剣を無理やり押し付け、ヘルバスは背を向けた。
「土産、待ってるぜ」
手を振って、遠ざかっていく。
出立の時が迫っていた。
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