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 ヘルバスの後姿を目で追いつつ、レイレスは片手を空へと伸ばした。と、同時に一声鳴き、エニーロがその指先に降りた。 「どこから見ていた?ファーロ」  エニーロの頭を指先で撫でながら、静かに背後から現れたファーロに問いかける。  膝をつき、頭を下げるファーロの表情は曇ったものだった。 「何が言いたい」  ファーロを顧みると、レイレスはヘルバスから預かった短剣を懐へ仕舞う。 「私が人間に興味を持っていることを案じていたな」 「……はい」  レイレスはその返答を聞くなり、ぷっと笑い出す。 「いまさら、人間になろうとも、この国を滅ぼそうなんて事も、考えてないよ」  ファーロは顔を静かに上げる。微かに寄せられた眉間。顔半分を覆う眼帯に手を伸ばし、レイレスは唇を結ぶ。 「お前の忠誠は消えうせてはいないな?」  その眼帯の下にあるものこそ、忠誠の証。前国王であったレイレスの父、ファロマイズに刳り貫かれた傷跡。  知っているのは、当時まだ幼子だった三人の姉姫と、物心もつかぬほどの赤ん坊だったレイレスだけである。 「…仰せのままに」 「よし」  ファーロの顎を掴み、「立て」と小さく呟く。言われるままファーロは立ち、レイレスを見下ろした。 「俺の不在を預ける。ファーロ。何があろうとこの城を守れ」  ファーロは、微笑を浮かべる。 「御意」
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