エピローグ

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アスタの誕生パーティーより、1ヵ月後。状況は著しく変化した。 サラのもとには連日マスコミが押し寄せ、彼女に取材を申し込んだ。新しく誕生した平民の姫に、国中が活気づいた。新聞は飛ぶように売れ、文字の読める人間のもとに、人々は集まった。 そして貴族たちからも、サラへの面会希望が相次いだ。これは花嫁決めの際の余波だろう。自分の娘を、王子の妻にしたがった貴族からすれば、やんわりとした口利きとは言え、国王や王子に知られるのはまずい。口止めとごますりを兼ねての、面会と彼女へのプレゼントが多く届けられた。 さらに、サラ自身の花嫁修業が始まった。ピアノ、社交ダンス、戯曲の知識、ファッションやその流行。これまで彼女が学んだことのなかった知識が要求された。 王子の妻とはやはり、一朝一夕でなれるものではない。彼女の花嫁修業が急務と判断され、側近の仕事を、今はリチャードが請け負っている。仕方のないことだ。彼女のスケジュールでは、側近の仕事もこなすなど到底無理だ。サラも、頭では分かっていた。 ――それでも、彼の隣は自分がいいと願ってしまうのだ。 アスタには自分じゃない側近が隣に立つと分かっていても、彼女はまだ、それを受け入れられないでいた。 忙しさから、彼に会えない日が続いた。
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