エピローグ

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「あぁー。また間違えた」 サラはうんざりと呟く。一人、ピアノの練習をしているのだ。以前は、アスタのピアノのレッスンを遠くから見ているだけだったが、実際に弾くのとでは、全然勝手が違う。 サラは窓の外に目を向けた。今夜の月は半分だ。夜が長くなり、少しずつ涼しくなってきた。もうすぐ夏も終わる。 「月が綺麗ですね」 その声に驚いて、サラは振り返る。入口にアスタが立っていた。 「おう――」 『王子』と言おうとして、彼女は慌てて口を閉ざす。それを見て、彼はにやりと笑った。 「残念。あと一文字だったのに」 サラは彼を睨む。この1ヶ月で、二人の関係も変化した。その中の一つが、呼び方や言葉遣いに関するもの。『王子呼び禁止。敬語も禁止。破ったらキス1回』3年アスタの下に仕えていた彼女からすると、かなり不利な案件だ。サラは息を整えて、彼に問う。 「どうしたの?アスタ」 「ゴトーの新作を入手した。一緒に食べよう」 言うなりアスタは絨毯に座って、箱を開ける。『ここで食べるのか』と彼女は胸の内で突っ込む。早速一つ食べてしまって、リラックスモードなのだから今さら言ったところで無駄なのだ。ため息をついて、サラも絨毯に座る。
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