エピローグ

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アスタはまたチョコレートを置いた場所に戻っていく。その背に彼女は訊ねた。 「リチャードさんは?引継ぎ、あまりちゃんと出来なかったけど、困ってない?」 「ん?」 彼はまた包みを開く。もう夜だというのに、まだ食べるのか。 「まぁ、リチャードは、特に何にも言わなくてもやってくれるからな」 「新しい人が決まったら、また引継ぎが大変だね」 「新しい人?」 アスタが首を傾げる。その反応にサラの方が驚く。 「だって、私、側近辞めちゃうんだよ?リチャードさんも今だけで、代わりの人がそのうち決まるでしょう?」 「え?俺、サラに側近辞めさせるつもりねェよ?」 「え?」 彼女が目を丸くすれば、彼はいたずらっ子のように笑った。 「いいじゃん。俺の側近で、俺の妻で、俺の嫁」 「二つ被ってる」 「細かいこと気にすんな」 からからと笑い、アスタはまたチョコレートの包みを開き、今度はそれを彼女の口元に差し出す。 「今はサラも忙しいだろうから、側近の仕事は暇をやっただけ。リチャードだって仕事はできるけど、それでも俺の隣は、サラがいい。優秀な側近を手放す気はねェよ」 ――あぁ。なんてことだろう。彼女は目頭が熱くなった。この人は本当に、私を甘やかす。私の嬉しい言葉を分かり過ぎていて困る。サラは向けられたそれに、素直に口を開けた。甘い匂いが鼻を通っていく。 「ありがとう」 「いいえ」 アスタは嬉しそうに笑った。
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