俺の姫様に愛されたい

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アスタは思わず硬直した。何も返せないでいるうちに休憩が終わったのだろう。声をかけられたサラはホールに戻っていった。しばらく動けなかったアスタは、肩を震わせた。その目には、怒りしか映ってなかった。 ――ああああ゛!?上等じゃねェか!?どんだけ上手くなったか知らんが、サラのダンス笑いに行ってやる! 怒りの赴くまま、アスタはダンスホールに入る。サラがぎょっとするのが目に入ったが、お構いなしだ。むしろ王子の乱入に周りの方が驚き、慌てて椅子を用意する。アスタはそれにどかりと座り込んだ。その彼の隣に、初老の女性が腰かける。もともと用意してあった講師用の椅子だ。 「ごきげんよう。王子」 「ごきげんじゃねェ」 あからさまに不機嫌で返すアスタに、彼女はおかしそうにくすくす笑った。 マダム・グランドール。グランドール侯爵夫人で、社交界の重鎮。マダムと呼べば彼女と分かるほどの有名人だ。もう60歳を超えているはずだが、見た目はもっと若々しい。 そしてマダムは、彼が不機嫌な理由を承知していた。むすっとしたまま、中央で踊るサラを見る彼に声をかける。 「もともと私は、王子と一緒に練習したら?と言ったのよ?一緒に踊る機会も多いだろうし、でも――」 「『アスタとは一緒にしたくない』」 「あら?ご存じで?」 「ついさっき知った」 マダムはまたくすくす笑う。 「それで見学に来たの?」 「笑いに来てやった」 「あら。ひどい」
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