俺の姫様に愛されたい

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サラは目を丸くする。 「え!?」 「早く」 有無を言わさぬマダムの口調。うろたえるサラをアスタは見つめる。サラは唇を真横に引き結んで彼を見ていた。――不安そうな顔しやがって、まあ。 アスタは席を立ち、彼女の前まで進むと腕を開く。サラが彼のホールドに入ってくる。しかしアスタは、その距離に違和感を覚えた。 「サラ、遠い。もっとこっち」 アスタが彼女の腰を引き寄せれば、サラはびくりと身体を震わせた。 「あら?」 その反応に、マダムは眉を寄せた。しかしアスタはというと、どこか納得していた。 『なんで俺に声をかけなかった?』と詰め寄った時、サラは一歩下がった。あの時は疑問に思わなかったが、あの距離で身を引くのは、今考えればおかしい。 マダムは、サラに男性経験がないから、男と密着するのは難しいと考えた。だから、密着することに抵抗のない相手、婚約者の俺を選んだ。しかし、俺に対しても距離が遠い。アスタは彼女を見下ろした。 ――サラ、なんか隠してる。 だが彼は、顔を上げない彼女を見て問い詰めるのを止めた。サラ自身が俺を拒んだのを分かってる。だから顔を上げられない。アスタは腕を下ろし、サラの手を取った。 「サラ」
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