俺の姫様に愛されたい

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***** その日の夜。アスタの部屋のドアが遠慮がちに叩かれた。『どうぞ』と彼が声をかければ、ドアの隙間からサラが顔を出した。 「アスタ。今いい?」 「サラ?」 彼は慌てて立ち上がり、彼女を出迎える。 「どうした?」 「あ、えっと。話があって……」 サラはうつむき、不安そうに手を擦る。だが、アスタの方は少し、いやかなり浮き足立っていた。サラが自分の意思でここに現れたからだ。アスタは彼女にソファーを勧める。二人は並んで腰かけた。 「あの、アスタ」 「うん」 「えっと。あの……」 意を決して、サラは顔を上げ、話し始めた。 「会いに来れなくてごめんなさい。ちょっと、会いに来づらいことがあって。その……マリーナ様に『サラはいつこっちに来る?』って聞かれて」 「こっち?」 アスタは首を傾げる。 「私は今、家来みんなが借りてる宿舎にいるでしょ?」 「うん」 「今まで不便じゃなかったから、何とも思わなかったんだけど。この前マリーナ様にお会いして、聞かれたの。その……『サラはいつアスタの部屋に来る?』って」 アスタは思わずフリーズし、サラは赤面する。うつむきながらも、彼女は説明した。 「その、マリーナ様は婚約が決まった時には、国王様と同室だったらしくて、私にどうする?と……」 羞恥に震えながら、サラは視線を上げた。 「……ど、どうする?」
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