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彼女の態度に驚いたのは、アスタの方だった。
「さ、サラ。それ……意味分かって言ってる?」
アスタはうろたえた。――はっきり言おう。好きな女と同室なんて、手を出さない自信ない。
サラは慌ただしく視線を彷徨わせた後、小さくこくんと頷いた。アスタも思わず赤面する。弁解するように彼女は口を開いた。
「あ、あの、最初はどうしようって思ったの。夫婦になるんだから、当たり前のことだし。でも私、まだ勇気が出なくて、アスタの顔見れなくなってた」
自身の手を固く握っていた彼女は、アスタの袖を掴んだ。
「だけど今日、一緒に踊って思ったの。『この人と一緒だったら大丈夫だ』って。怖いことも、不安なことも、この人と一緒なら大丈夫だって」
サラは顔を上げ、真っ直ぐ彼を見つめた。彼女の瞳の熱量に彼は驚いた。
「アスタだからいいの。アスタじゃないと嫌なの」
その瞳にくらりとして、アスタは思わず彼女の肩口に顔を埋めた。
――あぁ。サラに愛されてる実感がほしいだなんて、俺、何てわがままなこと考えてたんだろう。
「サラ」
アスタはひょいと彼女を抱え上げた。
「俺、子どもは三人くらい欲しい」
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