花嫁

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アスタの誕生パーティー開始直前、二人は忙しく来場者の対応に追われていた。貴族がアスタのもとに現れて、挨拶していくのだ。 サラはどちらの令嬢なのかを彼に囁き、アスタは愛想よく言葉を返す。令嬢たちも彼へのアプローチに必死だ。しかし、一人一人にまともに声をかける時間はなく、慌ただしく過ぎていく。エミリアも声をかけた程度で、長く話はできなかった。 サラは、昨日のドレスを身にまとい、髪をアップにした。鏡の中の自分を見た時、王子の側近として勤めを果たさねばと思った。 ラッシュが騎士として警護に、テオとオリヴィアとヘレンが、招待客として参加しているのにサラは気づいていたが、彼らに声をかける余裕もなかった。 パーティー開始の際には、国王とアスタ王子が挨拶する手はずになっている。係りの者が、アスタに声をかけた。 「分かった」 アスタは令嬢たちに断りを入れ、壇上へと歩いていく。その背中に、サラもついて行く。ジョンズ国王と、マリーナ王妃が待っていた。係りの者に促されて、国王が壇上へ上がる。 「サラ」 ふいに声をかけられ、サラは顔を上げる。階段の途中で、アスタが彼女を見下ろしていた。 「今から俺がすることを、許してな」 「え?」 アスタは向き直り、そのまま階段を上っていった。……その言葉の意味を問えなかった彼女の胸の内には、大きな不安だけが残った。 三人が壇上に上がると、マスコミたちの構えたカメラのフラッシュが光る。タイミングを見計らい、国王が手を挙げれば、皆静かに彼の言葉を待った。 「皆様、本日は我が息子、アスタの誕生パーティーに出席していただき、誠にありがとうございます」
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