セミとモグラ

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 余裕を感じた私は歩速を落とし再び腕時計を見る。 時計の針は0:30を指していた。 ふと見上げると、電光掲示板に映し出された終電の時刻は0:23。 ダイヤが乱れたのであれば、その旨のアナウンスもされよう。 しかし、その様子もない。 腕時計の時間が狂い始めたと考えるのが妥当なようだ。 「もうそろそろ、電波時計じゃないとダメかな……。」 ホームへの階段を降りながら、共に年季を重ねたクォーツ式の安物腕時計を悲しそうに眺める。 今の仕事に転職して7年。 心機一転のために買ったソイツは、私より先に天命を全うする事になりそうだ。  郷愁に浸りながら乗車位置で電車を待つ私。 すると、程なくして漆黒のトンネルを光で照らしながら 乗客のいない列車がホームへと入ってきた。
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