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始まりの物語
時を遡ること遥か昔。
「舞姫様、もう少しで安全な隠れ家にたどり着きます。今しばらくのご辛抱を。」
「竜之慎、私はもうよい。せめてお主だけでも無事に逃げるのです。」
お屋敷を賊たちの襲撃を受けた竜之慎は、主の娘である舞姫を連れて逃げ出してきたところであった。
「何を言っているのです。この竜之慎、たとえこの身に代えても姫様をお守り致します。でなければ御館様にも顔向けができません。」
竜之慎は、舞姫の父親から無事に逃がすように言付かっていた。
「姫様、失礼します。」
竜之慎はそう言うと、疲労で動けなくなった舞姫を抱き抱えると再び走り出した。
それから、しばらく進んだところで竜之慎は周囲に人の気配を感知すると舞姫を下ろして二本の刀を抜き放った。
「竜之慎・・・。」
「大丈夫です、舞姫様。必ずお守り致します。」
舞姫の不安な気持ちを吹き飛ばすように、竜之慎はそう告げた。
「へっへっへっ! 漸く追い付いたぜ。」
「おっ、こりゃかなりのべっぴんじゃねぇか。」
「俺たちついてるな。こりゃ高く売れそうだぜ。」
十人以上からなる盗賊の集団に囲まれてしまった竜之慎。
「無礼者どもが。此方に居られるかたをどなたと思っている。」
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