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……いえ、これは建前。
周期的に選ばれる、もっとも『夢見人』様を輝かせてきた『夢住人』の役割。
本当はわたくし……『夢アリス』になんてなりたくなかった。
でも……『あの人』を好きになったと知られたらわたくしも『夢守人』になり、二度と『あの人』の『隣』に立てなくなる。
それだけは嫌だったの……。報われないとわかってはいても、わたくしを見ていないとわかってはいても……。
だから……夢の中の『彼の想い人』を演じ続けるために、自由の利く『夢アリス』を受け入れた。
辛くても、苦しくても、彼の『隣』を演じ続けられるなら……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
わたくしは偶然、彼の『想い人』に想いを寄せ、『夢守人』になった『夢住人』を知った。
最初はただの配役として『隣』役、『恋人』役を演じていた彼。
『夢住人』、『夢守人』どちらも『人間』に限りなく近い、『アンドロイド型ナノマシン』。夢の住人。
『隣』役はもっとも人間に近い演技を求められる。だから……『夢見人』様に本気で『恋』をしてしまう可能性が高い。それは『夢見人』様が『隣』役を無意識に選ぶことに準ずる。……『夢見人』様が、『もっとも想い描く理想の異性』。それが『隣』役、『恋人』役だから。
引き摺られてしまうのよ。……仕方ないことよ。わたくしが彼を想ってしまったのだから。
……好機、だと思ったわ。
彼を救い、彼女と縁が出来れば、わたくしにも可能性が出てくる。悪足掻きだっていい。
彼女がどんな人か知れば、もっと『あの人』に近づけるはず……。だって、彼女の中に『彼』がいたのを知ってしまったんだもの。
━━わたくしは掛けてみることにしたの。
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