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━━約束は夕刻だったかしら。
私は朝方から待ち続ける。……来るかわからないあの人を。
ここは、小さい頃からよく遊びに来ていた小さなホテル。
毎回おなじ部屋に泊まっていた。
今日もおなじ部屋。思い出の部屋。
ここから見える景色が好き。
観音開きの窓を開けたままにし、半透明のカーテンが風にはためく。
外には燦々とした太陽に照らされて海が煌めく。
━━来てくれないかもしれない。
不安が的中し、約束の夕刻になっても現れない。
……そこで一瞬、視界が途切れた。
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