アジフライと白の衝撃

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 奥の厨房ではフライヤーの前で、母の千恵子が何やら大量のフライを揚げている。パン粉が付いた逆三角形から尻尾が見えた。あれはアジフライとみた。 「その大量のフライ、注文?」 「あ、愛弓、丁度良かった。消防団の寄り合いだって。それ、箱詰めして」 「はぁいっ!」  三角巾を被り、手を洗い、ビニール手袋をはめた。小さい段ボールにキッチンペーパーと経木を引き、慣れた手つきでその上に揚げ物を並べていく。誰に教わった訳でもなく小さい頃からの習性なのだろう。店屋の子供は、何かと働かされる。 “働かざる者、食うべからず”  文字通り、働かなきゃ美味しいものは頂けません。  両親は、店の仕事が忙しい。愛弓は、小さい頃から祖母の食事で育ち、祖母が亡くなると母と分担して食事を作っている。商品が余れば、おかずの確保にもなる。これは、暗黙のルール。  フライヤーの熱波と戦い、汗を掻きながら作業をする母。その様子を伺う。 「これ何枚入れるの?」 「え、ああ、全部25ずつ」 「はぁい。えぇっと、1、2、3、・・・・28」  早速、数を確認するとアジフライとエビフライが三つずつ余る。     
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