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これは夕飯に違いない。そう確信して愛弓は、「よしっ!」と心の中でガッツポーズをした。アジフライは、愛弓の好物だ。気持ちの中では、今日のフライに歓喜を叫び、せっせと箱にフライを詰めていく。
手伝いが終わると推測通り、余った揚げ物を容器詰め、千恵子が手渡した。
「これ、夕飯のおかず。後、キャベツ切っといてね」
「うん、わかった!」
早速、自宅に帰ろうとビニール手袋を外した。ふと、手袋を外した左手をみると小指の爪が気になった。爪の表面が何だかボコボコしている。よく見ると蛇の鱗のような模様になっていた。
「えっ、気持ち悪っ」
両手の爪をマジマジと見ると、模様が出ているのは両方の小指と薬指だけ。年頃の娘にしては、ネイルに興味を抱く訳でもなく、自分の爪をこんなに真剣に見たのは初めてだった。少し心配になって、千恵子に両手を差し出し、爪を見せた。
「母さん、これ、……なんだろう?」
「何これ?あんた、ダイエットでもしてるの?……いや、そんな訳ないか。変ねぇ、栄養偏ったかしら」
千恵子は、爪の事よりも娘の体調を気にした。
「まぁいいかぁ」
出した手をひっこめ愛弓は、揚げ物が入った容器をヒョイッと持ち、店を出た。
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