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自宅は、店の裏手の数メートル離れた所にある、垣根に囲われた古臭い一軒家だ。
「今日は、ア~ジフライ~♪」
愛弓は、容器を小脇に抱え、鼻歌交じりに軽やかに歩く。
「やっぱ、フライにはタルタルソースだよねぇ。いや?大根おろしにポン酢もアリかも」
美味しい法則で、幸せな気持ち。一分もしないうちに家の玄関の前。早速夕飯の支度をしようと、ポケットから鍵を取り出した。その時、何かの気配を感じ、左を振り向いた。何か大きなものと目が合った。
「えっ?」
首の体制を元に戻し、もう一度ゆっくり振り返った。そこには、少し斜め向きで白いフサフサと毛が生えた大きな顔があった。見たこともない大きな目が、ギョロリと愛弓をしっかり見ている。
「うっ、おぉ――――――――っ」
幸せな気分から一転、余りの衝撃に息を飲み、声にならない悲鳴を上げた。小脇に抱えていた容器がドンっと鈍い音を立てて落ち転がる。
「何、やだ。ちょっちょっ、なに――――っ!」
愛弓は恐怖の余り、何が何だか訳が分からない。慌てふためき、ガチャガチャと急いで鍵を開け家に入る。
「はぁあ、はぁあっ・・・・」
心臓がバクバクと音を立て、息が上がる。
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