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玄関のドアをしっかり締め鍵をかけた。靴を脱ぎ棄て、慌てて家に上がった。そのまま階段を駆け上がり、二階の部屋に入った。窓に向い、閉めてあるカーテンをそっとつまみ、外を覗いたが、さっきの大きな顔はいなかった。
「あ、あれ?」
カーテンを閉じ、愛弓はペちゃんと床に座り込んでしまった。そのまましばらく動けないままで数分が経った。
「……あれ何?」
自転車より大きな目、犬のようなフサフサした毛の生えた顔。見たこともない大きな顔にどう自分で説明が付くのか頭の中がグルグルと回転している。
「犬?いや、犬じゃないな。でか過ぎる。猛獣?」
自分が知る限りの動物には当てはまらない。吸い込まれそうな大きな目。思い出しただけでも緊張する。
少し落ち着いたところで、抱えていた容器がない事に気づいた。
「あっ、どうしたっけ?」
外で落としたことに気づき、一階に下り、玄関に向かった。
「どうしよう・・・・」
玄関を開けたら、再びあの大きな顔がいたらと思うと、正直扉を開けたくない。びくびくしながら扉ののぞき窓からそっと様子を窺った。
見える範囲をグルグル見回したが、肝心な所が見えない。仕方なく鍵を開け、少しだけ扉を開けてみた。目の前に見えるのは、地面に落ちた容器だけ。回りには何もいない。恐る恐る扉から首を出し、キョロキョロと辺りを見回した。
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