アジフライと白の衝撃

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 まるで悪い事をした泥棒の様に、少しずつ体を外に出し、一歩踏み出してみた。やはり何もいない。 「よしっ」  転がっている容器の所まで小走りで近づく。  拾い上げた容器は、角が少し凹んでしまったがシッカリと蓋が閉まっていた。そのお蔭で散乱は免れた。  愛弓は、容器をシッカリ胸に抱き、もう一度当たりを見回し、正面を向いたまま、さっきの登場を巻き戻したみたいにバックで玄関に戻っていった。扉を閉め、しっかりと鍵をかける。  今まで家に入るのにこんなに緊張したことがあっただろうか。手のひらにジットリと、汗がにじむ。 「ふぅ―っ」  大きく息を吐き、目を閉じながら唾を飲み込んだ。 (幻覚?いや二度見で幻覚はないよね?)  頭の中が、自問自答でいっぱいになる。考えながらキッチンに向った。 食卓に容器を置き、緊張でカラカラな喉を潤すため冷蔵庫を開けた。麦茶の容器を取り出しグラスに注ぐ。それを一気に飲み干すと、やっと気持ちが落ち着いた。 「ハァー。なんだったんだろうなぁ?」 大きく息を吸って、さっきまでの緊張とモヤモヤを全部吐き出すみたいに、鼻から一気に吹き出した。 「さて、キャベツでも刻むか」  気持ちを切り替え、夕飯の支度にかかる。     
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