お仕事

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月曜朝一に保博が支払いと仕事の御礼にやってきた。料金は振込で宜しくとか仕事の話をしながら、マキは、やはり土曜の夜の出来事は何だったんだろうか、もしかして、今夜は遊ぼうという合図だったのだろうかと何か血迷ってしまったのか、人間だから、そんなこともあるのだろうと淡々と毅然とした態度で仕事依頼の御礼や今後とも宜しくの挨拶をして、依頼人の保博は帰って行った。マキは、住む世界の違う依頼人とは二度と再会はないと思った。土曜の彼の温もりを心に残しながら、次の仕事を待っていた。 午後からの新しい仕事は弁護士事務所の飼い猫のお世話だった。何故か事務所で飼われていて、弁護士が帰宅すると一緒にキャリーに入り帰るのだが、耳の病になりお餅みたいに耳の裏側が腫れ上がり、獣医さんに連れて行く時間がないので依頼された。ロン毛の三毛で、ブランド猫らしいが、飼い主も何猫だか分からないとのことで、掛かりつけの獣医さんに連れて行くことになったが、超ワガママ猫で、名前はアイリーンで、何でもシャーロック・ホームズに出てくる悪女の名前らしい。マキにもなかなか懐いてくれないので、マタタビで手なづけた。滅多にない病らしいが、日帰り手術を受ける事になり、待ち時間は自由時間となった。暇になったので、マキは土曜の余韻から覚めずにいた。弁護士から連絡を受け、多忙だから入院を希望で、朝晩、そのアイリーンの容態を見に出掛けて報告して欲しいとの事だった。急きょ獣医クリニックに連絡して手術終わり麻酔が醒める時間に様子を見に行く事にした。しかし、それまで時間が有り、何となく先週のパーティー会場へとふらりと立ち寄り一階のカフェでお茶をしてしまっていた。何だか泣きそうになってしまっていた。
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