お仕事

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思わず涙を拭こうてしてトートバッグからハンカチを取り出したらボールペンがコロコロ転がってしまい、焦って拾おうとしたら、「どうしたの。何か悲しいことでもあったの。」と拾ってくれた男性のその顔を見上げたら保博だった。「大丈夫なの。仕事しくじったのかな。」マキは流れ出た涙を引っ込めることはできないので、「目にゴミが入ったの。」保博は「両目に入ったんだね。」と二人は微笑んだ。一緒にお茶をすることにして、保博もソファに腰掛けた。「来月お時間出来たら一緒に飲まない。」と突然言われて、先週の慰労会だと言うので都合の良い日は未定だったが、その日を優先したかった。 夜になり獣医クリニックに行き、アイリーンの病状説明を受け、依頼人に連絡した。もう目覚めていてエリザベスカラーを付けられ、外したいポーズだったが、しっかりとめられていたので、無理だった。カラフル包帯をされていた。取り敢えず帰宅して、来月の空いているかもしれない日にちを保博にメールした。行ったことがない居酒屋チェーン店で、服装はラフなスタイルが良いと返信があった。先日の豪華さとはかけ離れているような気がした。取り敢えずアイリーンの獣医通いをしながら、また別の簡単な依頼仕事を引き受けながら、当日の夜を待つことにした。 しかし、ラフな服装と言ってもと思案に暮れながらも純白のワンピースにしようかとクローゼットから限りある数の洋服を全部だしては鏡と睨めっこを毎晩その日が訪れるのを何故か不思議な気持ちで待っていた。
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