お仕事

2/12
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
マキは長年のOL生活を辞めて、貯蓄やらで、机一つの何でも屋業を始めた。勇気が必要な事ではあったが、このまま会社の御局様に留まり続けることは不本意であったから、取り敢えず別会社就職よりは何か自営でやったろかの心意気で、どちらかというと慎重ではあるが、向こう見ずでもあり机一つぐらいのスペースなら家賃もまあ何とかなると極めて楽観的思考で不動産屋にも自分の仕事においても話を進めていった。親をあてには出来ないし、リッチな家庭ではなく平凡な家族であるし、仕事がうまくいかない時には、やはり再就職なり、夜の仕事と言っても水商売よりも夜警の警備員が相応しいかもしれないと開業前夜は淡々と今ある難題やらを解決すれば良いのだと眠る事に集中した。多分、迷い犬猫捜索あたりからか、家事サポートか、まあそんなところかと脳裏は埋め尽くされたが深い眠りに陥り全て消えて朝を迎えていた。不安というよりも、きっと暇で朝から居眠りかと昨夜の残り物を弁当箱に詰めた。コーヒーなんかインスタントも買えないから水だわ。水道水これで充分とさっそうと新宿の裏通りの築数十年の都会の片隅されど、一国一城の主の社長になれた訳のわからない変な自信と優越感を感じながらもメールも着信なし、電話も鳴らない静けさにウッカリ微睡みコックリと居眠りをしてしまっていた。これでは失敗だったか、いや初日なんてこんなもんだと不安と恐怖と倦怠感に襲われながらも一時間も眠ってしまったら、お腹がグーっと鳴り初仕事連絡かと勘違いする程ノーテンキな自分に思わず笑ってしまっていた。昨夜と同じオカズだけど、仕方ないが空腹よりはマシと何だかお弁当食べて居眠りしておしまいかよと自問自答しながら、外に出て少し作ったチラシ配りをしなくちゃと立ち上がったらスマホが鳴った。母からだった。「マキちゃん仕事だよ。近所の飼猫ユキちゃんが昨夜から帰らないとお向かいのお爺ちゃんが心配しているからみつけてあげてよ。」マキは「エーッヤッパ猫か、それって仕事なの。ボランティアなの。」ママは「勿論仕事よ。お値打ちにしてあげてね。」マキは来たかとお金にならない仕事だけど居眠りよりはマシねと我が家お向かい宅へと地下鉄に乗りダッシュした。車にはまだ乗れないのはパーキング代が支払えないのである。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!