お仕事

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マキの家は中野で新宿から近い、ダイエットのために歩ける程の距離だが依頼人を待たせてはいけない。お向かいのお爺ちゃんが家の前で待っていてママと話をしていた。何でも外には出さないようにしていたのだが、ウッカリゴミ出しの時にドアを閉め忘れユキちゃんが出てしまったらしい。昨日から戻っていなく、お爺ちゃんは泣き明かしたのか眼が赤く腫れていた。猫が出掛けそうなミニ公園へダッシュした。ここには桜の木があり、お花見ができる。あとは神社かなとか別のミニ公園にも立寄り裏通りをくまなく捜索しながら、これで見つかったとしてもあまり通常料金は頂けないかもなどと、新米刑事のように緊張感と使命感を持って「ユキちゃーん。」と名前を呼びながら歩き回った。現場100回の精神だわと、まるでサスペンス劇場の女刑事マキの気分で捜索活動に専念していた。最初の仕事であるし、愛情と情熱と正義感の信念を持って着手していた。夕暮れ時になり本日は無理だろうかと自分自身の気持ちも落ち込みかけていた。初仕事は失敗したくないと強い信念がエネルギーと変化し、神社の前に来て、「お爺ちゃんも一緒にユキちゃんと叫んでね。」とお願いして、声を合わせて「ユキちゃーん。」 と祈りを込めて叫んだ。もう無理かしら暗くなると神社も怖いし、皆んなと一緒なら大丈夫かと、社の隅々まで必死で捜した。今日はもうダメかと諦めたその時、「ニャー。」と微かに鳴き声が聞こえてきた。マキは奇跡が起こったかと声の方向を向いたら真っ白なユキちゃんがやって来た。「ユキちゃん、ここにいたの。」思わず抱きしめて、お爺ちゃんと一緒に泣いた。ママや近所の人達も駆け付け、マキは「ユキちゃん、お外に出たらダメよ。」と優しく叱った。お爺ちゃんに御礼を言われ帰宅した。本日のお仕事終了し、お爺ちゃんは明朝改めて、御支払と御礼に伺うと涙を拭き拭き言った。マキは初仕事めでたく完了の喜びに浸っていた。
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