お仕事

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夜になり婚約パーティーの時間が近づいてきていた。予約して貰っていた一室で少し休憩したあと美容院でヘアセットを済ませカクテルドレスに着替えた頃に保博が迎えに来た。二人一緒に待っていないとまずいとの事で、父母の待機室へ一緒に行き、最終確認を済ませたあと、まだ招待客の居ないパーティー会場へと向かった。司会者とも打ち合わせをした。一旦控室に戻り、開始の時間を待った。保博の父が「何だか本当の婚約式だと錯覚しそうになるなあ。もう本当の式でいいんじゃないか。」と笑っていた。保博の母は「あなた何をおっしゃるの。マキさんが困惑されるわ。ねえ、マキさん。」と微笑んだ。確かに清楚に美しく着飾った何でも屋マキは輝いていた。会場に入る前に、保博は「今夜はマキさんには、お一人で一泊して下さいね。終わったらお部屋に案内しますから。宜しくお願い致しますね。」と言って、招待客を両親と共に二人は会場入口でお迎えした後に、またドレスを着替えて二人は厳かに司会者の挨拶のあとに登場した。歓声と拍手の中をマキはドキドキしながらも完璧にやり遂げなければならないと必死だった。震える手脚をと言ってもロングドレスなので脚は見えないので大丈夫ではあったが、保博が背後から優しく支えてくれて、「落ち着いてね。」と囁いてくれたので勇気が湧いてきて震えが止まっていた。あえて立食にして、あちこち会場内を動きやすいようにしていた。フランス人もいて、仏語で挨拶ができて、「サスガ、保博君の婚約者だ。」と両親もホッと一安心しているようだった。有名歌手も歌とダンスで華やかさを増していた。保博が、小声で、うちの会社のCMに出演してるからと教えてくれた。またお色直しで、最後はお振袖に変身して、「まるで結婚式みたい。」と話す声も聞こえてきた。
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