振替運転

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振替運転

 数日後、私は病室で目を覚ました。  医師の話ではあのめまいは急激な体重の増加と興奮に血液の循環が追い付かず、貧血を起こしたことが原因だという。なんともしまらない話だ。  足を骨折した私は長期の入院を余儀なくされデブ活も中断、健康的な病院食により退院するころにはすっかりデブ活前のやせぎすに戻ってしまっていた。 「はぁ、夢も希望もありゃしない」  地下鉄に向かう足取りも、いつもよりずっと重い。こんなひょろひょろの身体では、あの大きな身体で味わった愉悦を経験することは出来ないだろう。  私は習慣となっている階段付近のドアから、細い身体を滑り込ませるように満員電車に乗車した。  その時、今までになかった事態に遭遇した。  降りる客と乗車する客が交錯する無秩序な波に、私の弱りきった身体が巻き込まれたのだ。  退院したての力が入らない身体は抗うことすらできず、乱雑な波に翻弄されていく。そして気が付いた時には、私は強引に電車の隅に追いやられていたのだ。  こんな狭い空間に押し込まれたのは、初めてのことである。 「これは……なんて、みっしりなんだ……」  どんなに満員の電車であろうと、そこには必ず隙間が出来る。だが私が小さく細くなれば、その隙間に入り込むことが出来るのだ。猫の額のような狭く息苦しい空間の、なんと心地よいことか。  小さくなれば、もっとみっしり。  その日から、私のダイエット生活が幕を開けたのであった。
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