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発車のベルがなった。
階段から、よーいドンとスタートをきったように人々が駆け出した。そして私のすぐそば、階段から最も近い乗車口へ一直線に向かってくる。私は今か今かとそれを待ち受けた。
やがて無遠慮な圧迫感とともに、沢山の人間が飛び込んでくる。すでに満員である車内が、さらに窮屈になっていく。
「んんっ、ふっ……こほん!」
あまりの心地よさに、つい声が漏れてしまう。慌てて咳ばらいをして、私は平静を装った。駅員がグイグイと乗客を押し込むたびに、車内の密度はあがっていく。
息苦しさと窮屈さに、私の頭は次第に陶酔に包まれていく。もはや指さえも自由に動かせない地下鉄の中で、ぶるりと身体を震わせた。
ああ、なんてすばらしいのだろう。みっしり。
動き出した電車の中で目を閉じる。
この時間が永遠に続けばいいのに。それは、どんなに幸せなことだろうか。妄想に浸っていると、ゆっくりと電車がその速度を落としていった。
次の停車駅では、もっともっと人が乗ってくるはずだ。私は期待に打ち震えながら、押し寄せてくる人波を待ち焦がれていた。
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