4LとOL

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4LとOL

「ふぅー、ふぅー……」  梅雨入りを迎えるころ、私は自分の鼻息が聞こえてくるほどにしっかりと肥えていた。  たゆまぬデブ活によって手に入れた、たゆんたゆんの4Lサイズのこの身体。  目指すは今日も満員御礼の通勤ラッシュ、ピークタイムの地下鉄である。  軽やかな気持ちとはウラハラの重い足取り。一歩車内に踏み込めば乗客たちがことごとく眉を寄せ身をかわす。  しかし悲しいかな、ここは満員電車。  誰かが一歩下がったところで次々と人が押し迫り、やがては私の肉の中に溺れていくのである。私は定位置である階段そばのドア付近に立つと、駆け込み乗車を今か今かと待ち望んだ。  発車のベルとともに、ひとりの小柄なOLが私の立つ乗車口に飛び乗った。ぽよんと沈み込むように私の肉に軽く埋もれると、不快そうに身体をよじる。  駅員がやってきて、OLが手前に持ったカバンをグイグイ押して電車の中に収めようとした。私の肩ほども背丈のない小柄な女性が、私の中に少しずつ埋もれていく。 「あの、すいませ……くるし……」 「ああー、ごめんなさいごめんなさい」     
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