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寝る前に、必ず立ち寄る父の部屋。
そこには、父の写真が、写真立てに入って並んでいる。
「お父さんは死んでいない」
そう信じる羽海は、祖母が仏壇に写真を飾ろうとするのを制した。
父の部屋の、父がいつも座っていたところに、写真を置いていたのだ。
「……?」
今日、初めて羽海はある「もの」を見つけた。
『親父の釣り道具 触るな!!』
少し、大きめの木箱。桐……だろうか?
上品な箱が、タンスのいちばん上で埃をかぶって置かれていた。
「釣り道具なのに……使ってない?」
羽海は、背伸びして箱を取る。
その大きさで、ある程度の重さを想像していたが、『それ』は容易く下ろすことができた。
「……鍵?」
桐の箱には、鍵がかかっていた。
針や網など、部屋に広げっぱなしにしておくような、豪胆な父。
そんな父が鍵をかけて目につかないところへ置いておく。
羽海は、その中身が気になっていた。
「……帰ってきたら、聞こう。」
帰ってくるかもしれない父に許可無く、鍵を壊すことなど出来ない。
羽海はそっと箱をもとの場所に戻し、眠ることにした。
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