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「では、私はお茶でもご用意いたしますね」
美子はご機嫌に給湯室へと向かう。
その背中からは歌声が聞こえてきそうなくらい弾んでいた。
「では、私は業務に……」
「ちょっと待ってよ。せっかくなんだ、話さない?」
窓際の一人用ソファに案内し、全面ガラス張りから見える外の景色を完全に無視して、一条息子は私の腕を取る。
掴まれた男の手に、私は「ひっ」と小さな叫び声を上げた。
「さっきは高柳の邪魔が入ったからね。凛子さんとはもうちょっと話をしたいなーって思ってたんだ」
「わ、私は結構です……」
「まぁ、そう言わずに。さっき気になる話が聞こえちゃったんだよね」
「……えっ?」
「キミたち、普通の夫婦じゃないんでしょ?」
サラッとバレた私達の関係。
私は一条息子の手から逃れることは出来ず、その場から動けずにいた。
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