身近にいた過去の人

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「まぁ、そう言わずに。さっき気になる話が聞こえちゃったんだよね」 「キミたち、普通の夫婦じゃないんでしょ?」 一条息子の口からこの言葉を聞いた途端、冷や汗がドッと流れてきた。 さっきの会話、この男に聞かれていたんだ…… 私は一瞬、表情を歪めてしまったけれど、すぐの立て直し、笑顔を作った。 「なんのことでしょう?私と夫は特に会話などしておりませんが」 「誤魔化しても無駄だよ。全部聞こえてたから。凛子さんが啖呵を切ったところまで全部」 ……笑顔が固まる。 そこまで聞かれていては、たしかに誤魔化しても無駄だった。 ただ、聞かれていたのが高柳の親友でよかったのかもしれない。 あの男と付き合いが長いのであれば、どれだけの野心家の男なのかよく知っているだろうから。
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