身近にいた過去の人

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「お茶なら実は取り寄せたものがあるの。ぜひ、真人さんに飲んで頂きたくて奮発して購入してしまったわ」 「ホホホ……」と母は上品に笑いながら、扇子で口元を隠す。 見合い写真を積み、私に見合いを強要したあの時に使用していた金箔入りの扇子だ。 嫌な思い出しかないものは、嫌な予感しかしない…… 手入れされた庭園を歩きながら、私はそんな気分に襲われていた…… ****** 高柳と婚姻届を書いた客室とは反対にある、社寺仏閣でも使用される畳の部屋で私達は身体を休め、執事が淹れてくれているお茶を待っていた。 鮮やかなイグサの色とほのかに香る畳の匂いは、心身ともに安らぎを与えてくれる。 畳の部屋も悪くないな……と、庭に出て盆栽について熱く語る父と、それをうまく相槌をうつ高柳の背中を見ながら、そんなことを思っていた。
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