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遊び始めてすぐに、朝日の携帯に着信が入る。
「ゴメンね、隆一君。パパが帰ってこいって……」
「そっか。じゃあ送ってくよ」
一度下がったテンションは中々戻らず、その言葉に安堵している隆一がいた。デートを純粋に楽しめなかった隆一は、朝日を送ると気分転換にバイクで走り出す。気が付けば溜まり場の近くに来ていたが、海を見る気にはなれずに近くの山へと向かった。
すると、いつもは交通量の少ない山道で、横道から飛び出して来た複数のバイクとすれ違う。
「なんだ、あいつら? 喧嘩でもしてきたのか?」
覚えのある匂いが隆一のバイクを止めた。すれ違ったバイクが飛び出して来た道の先は崖になっていて行き止まり。興味本位だけで、行き止まりの道へと進路を変える。
「これは?」
崖まで進んでバイクを降りると、先ほど感じた匂いが一層強く鼻を刺激した。辺りを見渡し、草むらの中を進んで行く。
「やっぱり血の匂いだ……ん? おい、誰かいるのか!」
草むらに気配を感じ、息を飲んで踏み込んだ先には血だらけの男が横たわっていた。
「かい……と? おい、海斗!」
抱きかかえて名前を呼んでも反応が無い。
救急車を呼んでも、車の通れない場所へ来るのは時間が掛かり過ぎる。そう考えた隆一は、上着を脱いで海斗の体を背中へ縛り付け、近くの病院へとバイクを走らせた。
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