30人が本棚に入れています
本棚に追加
「反対はしないが、俺は遠慮しておく。それと、この場所には連れて来るな」
「ちょっ、兄ちゃ……」
「待て、海斗。凍夜はそう言うと思ってたよ。みんなで遊ぶとか苦手だからな。でもさ、ノロケ話くらいは聞けよ?」
「ああ。この場所で聞くよ」
命を懸けて隆一を守る。そして、邪魔はしない。それが凍夜を生かす鎖。
この日を境に、溜まり場には凍夜一人という状況が増えた。隆一は海斗を連れ、朝日と仲の良いグループに交じって遊ぶ機会が多くなる。
「朝日さんって可愛いんだよ。優しくて、いつもニコニコしているんだ」
海斗の楽しそうに話す内容を聞いて、凍夜は素朴な疑問を投げ掛けた。
「英二は?」
「英二さん? 面白い人だよ」
「そうか……海斗から見て、隆一の色は変わったか?」
「……隆一さんと兄ちゃんの色だけは変わらないよ」
何でも素直に話す海斗が声を濁す。違和感を覚えた凍夜だったが、追及を許されないほど、異常なまでに朝日の事を聞かされ続けた。
そんな日々が続き、七月のむせ返る様な暑い日。一人で歩く海斗を見つけて凍夜が声を掛ける。
「今日は一人なのか? 隆一達はどうした?」
「兄ちゃん……今日は体の調子が悪くてね……」
明らかに態度がおかしい。それに、海斗の瞳の色が暗い夜の海を連想させる。
調べる必要があると動き始めた凍夜だが、最悪の事件は予想以上に早く起きてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!