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「後藤さんで微かにしか見えないんだったらこっちは、ぜんぜん分からないじゃないですか!」
糸田は、困ったように後藤を見据えて少し声を大にして言い返した。
「糸田は、しょうがないよ」
「そう言うあんたも見えてへんやろ?」
「まぁね、でも気配だけは感じる」
「気配ねぇ……」
「気配と言う前にその人から何か感じてくるような気がしたんだけど……」
途中で何も感じる事が出来なくなった……と首を横に振りながら小さくため息をついた。
「じゃあ二人がお手上げだったら」
「そこでだ、ここで糸田の力をちょっと借りたいんだけどさ」
「……なんか嫌な予感が……」
「何があったのか今度あの人が来たらこっそり見てくれない?」
ちゃんと手伝ってあげるからさ、村井が満面の笑みで手を合わせながら池田に向けて静かに言った。
そんな村井に糸田は、おもわず苦笑いを浮かべて聞き返してしまった。
「だから……」
「あれ、あまり使いたくないんですけど……」
「そんな事言わずに……さ」
「……はぁ……今度来たら見てみたら良いんですよね?」
糸田はため息混じりに頭を抱え、村井に何度も頼まれてついに根負けしてしまったのか小さくため息をついて確認するように承諾するのを確認した村井は、いやぁやっぱり頼りになるねぇと呟くのが聞こえてまたため息を洩らす
「じゃあ、よろしく」
「……分かりました」
「でもなんでそんなに嫌な訳? 自分の力を使うの」
「嫌って訳でもないんですけど……見境が着かなくなるんですよ、あまり使うと……それにすごく体力も使いますし」
村井の問い掛けにほぼ即答するように答えた。
「……でもここでは……」
「……俺の力も必要となってくる、ですよね? 何回も言わなくて良いです」
「分かってんじゃん」
糸田に向かって笑みを浮かべるとふと出入り口の扉を目を向ける
「……真実が分かれば良いんだけど……」
扉以外は誰もいない空間を見つめて独り言を漏らした。独り言を漏らした後、ゆっくり右目を手で隠して一瞬だけであったが表情を歪ませた。
「……また明日が楽しみ」
「……………………………………」
後藤も村井の呟きを聞きながら微かに目を細めて何もない扉だけある空間を無言で眺めていた。
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