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──翌朝
カーテンの隙間から差し込んできた太陽の光でゆっくり目を覚まして、重い頭を起こした。
俺、いつの間に……
(この店は、特別な人にしか来れないんですよ……例えで言えばあなたみたいな自分の事を憎んでいたりとか……)
「………………………………」
(本当は、いつまでも自分の事を憎んでいくのは、みっともないと思っているんじゃないですか?)
(自分をどんなに傷付いてもそんなの誰も喜びませんよ? 当然亡くなったあなたの親友も……)
(心に潜めている後悔を取り除きたいと思った事ありませんか?)
頭の中で昨日村井と言う青年に言われた言葉が頭の中に張り付いたように思い出す。
そしてあの店を出る直前に言われた言葉が一番印象に残っていた。
(もし自分をあの頃を取り戻したいという気持ちが少しでもあるんでしたらまた来て下さい、そうしたらまたこの店の扉は開かれますので……)
「あの頃の自分……」
(後輩としてです。伊野部さんにはあの憧れていた時に戻って欲しいんです)
病室で伊川に言われた言葉が胸に突き刺さった。
病室であいつもそんなこと言うてたな……
視線を自分の右手首に移してゆっくり左手で包帯で隠れていないむき出しになっている昔の切り傷の痕をスッとなぞった。
古傷をなぞった後に力強い右手を握り締めて
「変わらなあかんな」
それだけ呟いて立ち上がり、スーツのままだった格好から私服に急いで着替え、ある場所に向かった。
そうあの昨日の店に……
今のままではやっぱりあかん。そんな気がして……
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