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店に向かう途中、おもむろに携帯を手に取る
「……先輩?」
「あー……伊川か?」
「どうしたんですか?先輩の方から電話してくるなんて」
後輩でもある伊川に久し振りに自分から電話をかけていた。
「い、いやっ、ちょっとな」
「まさか先輩また……」
「ちゃうわ」
「じゃあいったい……」
「昨日病室で言ってたお前あの言葉やっと意味が分かったような気がしたわ」
「えっ? それどういう事ですか?」
「お前が憧れていた時の俺に絶対戻ってみせるからな」
「先輩!? それって」
「……昨日は、ほんますまんかったな、怒鳴ったりして……でもあの時は」
「謝らないで下さいよ、謝られたらせっかくの先輩の威厳がなくなってしまいますよ? 先輩は、堂々としてるんが先輩らしいんですから……」
電話口の向こうで伊川が嬉しそうにしながら声を高くして言っているのが分かった。
「威厳ね……分かったわ、じゃあまた時間が出来たらどっか飲みに行こうな?」
「……はい!」
「仕事休みなんにいきなり電話してもうてすまんかった」
「ぜんぜん良いですって、いつでも連絡待ってますから」
じゃあまた電話するわ、そう言い残して電話を切った。
電話を切るとまっすぐ歩き慣れた道を見つめて歩き進めた。
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