第一章/第二幕「悲しみの真実へ」

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【心清堂】 「来るんですかね……」 「さぁ……」 「さぁって……」  糸田の問い掛けに曖昧に答えた村井に呆れたようにため息を漏らした。すると 「あの男、間違いなく来ると思うで」  二人の会話に割って入るように答える声が突然聞こえた。 「相変わらずいきなりの登場ですねぇ」  梶さんと声の相手の名前を言ってゆっくり振り返ってみれば、入口に一番近い席の椅子の背もたれに腕を乗せて一人の男の姿がこちらに笑みを浮かべて座っていた。 「あの男絶対来ると思うで」 「その根拠はあるんですか?」 「根拠とかそんなもんないわ、ただ言えるとしたら僕の勘ってやつ」  梶が質問に笑みを浮かべ、椅子に腰掛けたまま自分の頭に指差して軽く二回つついて答えた。 「梶さんは相変わらずですね」 「まぁな……あっ、そういえば一人見当たらへんな」  梶が椅子に座ったまま周りを見渡して言っていれば、村井が表情を変えることなく口を開く 「あーもしかして後藤君の事ですか? 後藤君はちょっと別件で出てもらってます」 「またお前の事やから無茶な頼み事したんやろ?」 「さぁ、それはどうでしょう」 「ほんまあいつとそっくりになってきたなぁ」  笑ってみせる村井の姿を見て、梶は誰かを思い出したのかおかしそうに笑いながら呟くと椅子から立ち上がる 「まぁ、だからこそあいつは、お前を後継ぎとして選んだんやと思うけど……」 「それで本当の用はなんですか?」 「あー忘れとった……あの昨日来たお客さんの事なんやけど」 「あっもしかしてなんか分かりました?」 「昨日来たお客さんと仲良かった親友の名前やけどな、調べたら案外すぐ分かったで」 「おぉ、いつも通り仕事が早いですねぇ」 「それはどうも……それでこれが頼まれたもん」  そして梶ははいっと村井に何かを手渡した。 「ありがとうございます」 「なんですか? それ」 「今は秘密。でも何かはすぐに分かるよ」  糸田の問いにまた曖昧に答えると梶から受け取ったそれを懐に入れた。あとで必要になってくるからねと付け加えた。 「じゃあ戻るわ」  ひとまず佐々木から渡すように頼まれたもんはちゃんと渡したで、と村井に言い残すと歩き出し横を通り過ぎた瞬間にスッと姿を消した。
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