プロローグ~全ての始まり~

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 とある日の夜更け  二人の男が向かい合うようにテーブルを挟んで座っていた。 「いきなり呼び出してどうしたんです?」  ハットを脱ぎながら尋ねる男、村井に笑みを浮かべ、頬杖をつきながらちょっとねぇと着物と羽織をを身に纏った男が村井の顔を見つめると口を開く 「あのさ、この店継いでくれない?」  おもわず、えっ?とその言葉に驚きを隠せずに村井は、なんでと聞き返そうとした瞬間 「君に引き継いで欲しくてね、その方が君の為にもなるだろうし」 「どういう意味……」 「そのまんまの意味、君が一番分かってるはずだけど?俺なんかに聞かなくても」  笑みを浮かべたままそう告げると懐から一枚の封筒を取り出す。  これは、と問いかける前にこの店の権利書と答えた男もとい井原にさらに驚きを隠せないでいると笑みを深める 「君の力は人の役に立てる。いつまでも自分の目を嫌わないでさ」  なんでもやってみないとそう言って右目を指すとあからさまに嫌な表情に変わる 「言っとくけど、俺決めたことは曲げないから」  そういうことだから、あとはよろしく。立ち上がり、手をヒラヒラされながら村井の横を通り過ぎ、カランとドアのチャイムの音だけ残して、店を出ていった。  村井とテーブルに置かれた封筒を残して…………  ──それから数年後 「片付けるの手伝ってくれませんかね?」 「なんで僕が手伝わないといけないの?これは糸田の仕事だろ」 「糸田、諦めるしかないで、あいつは手伝う気更々ないからな」  その言葉にまじ最悪、とモップ片手に愚痴を溢す糸田にあと少しだから頑張れとカウンター席に座る村井に悪態をつくようにため息をする後藤 「客来るのか? てか来てくれないとここの経営やっていけな──」 「んーどうだろうねぇ……」  危機感のない様子の村井に開ける必要あります?と糸田が床を磨きながら尋ねる姿に向かって一言 「今日は来るよ、絶対にね」  そう言って笑みを浮かべた時、一瞬だけ右目が光ったのは傍にいた後藤だけが知っている。  そんな三人が経営する心清堂は、ある特定の人に限り入ることが許される不思議な店  今宵そんな心清堂に一人の男が訪れる。
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