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──某病院の病室──
真っ黒な視界から少し光が差し込んでいき、やがて視界が少しずつはっきりとした。
最初に見えたのは、何も汚れのない真っ白な天井だった。
「……………………………………」
また死なれへんかった……
目覚めた男は、真っ白な天井を虚ろな目で見つめたままそんなことを思った。
そんな事を思っていると視界の端に人影が見える
「目覚められたようですね」
不意に横から話しかけて目だけを目線をやってみるとそこには一人の男が愛想笑いを浮かべて椅子に座っていた。
「なぁ……」
「また手首切られたんですね……」
「そう思うんやったら助けんかったらええだけの話や」
苦痛の表情で座る男と一切目を合わせずきつく言い放ってみれば、さらに表情が歪む
「何馬鹿な事言ってるんですか!」
そんな男の言葉に怒るように叫んだ。
「なんでそんなに死にたいんですか!?」
「………………………………」
「…………先輩がそうなってしまったの、あの人が死んでしまってからですよね」
「それ以上何も言うな」
「先輩……」
勢いで立ち上がって椅子に座る男に苛立ちを込めるように声を低くさせると黙り込んだ。
「……あいつは、関係ない」
そう言いながらも未だ目を合わせようとはしなかった。
「……なんで助けたん、俺の事?」
「なんでって死んで欲しくないって思った。それ以外何もありませんよ」
「……伊川……」
ずっと目を合わせなかった立ち上がった男いや後輩の名前を呼んで目を合わせた。
「はい……」
「……俺、前にもお前に言うたよな? 二度と人の家には勝手に入ってくんなて、あともう俺の事を助けるなって」
「……………………………………」
「それなのにまた助けやがっ……」
「だから何馬鹿な事言うてるんですか!?そんなのいくら尊敬してる先輩の言葉でも聞ける訳ないやないですか」
「それは、どうゆう立場で言うてんねん?」
少し馬鹿にしたようにそしておかしそうに鼻で笑いながら聞いてみると表情はそのままに重い口を開く
「当然後輩としてです。伊野部さんにはあの憧れていた時に戻って欲しいんです」
俺の問い掛けに真剣な表情を浮かべて答えた。
「……………………………………」
「自分で自分のこと傷付いてどうなるんですか?そんな事しても……」
「そんな事をしてももうあいつが戻って来ないのは、分かってるわ」
まだ何か言おうとしている伊川の言葉を遮るように呟く
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