第一章/第一幕「悲しき心を持ちし者」

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──それから数時間後 「……………………………………」  病院を退院した伊野部は、何をするわけもなくただただ商店街を静かに歩いていた。 「………………………………」  ふと覗き込んだ袖から見える手首に巻かれた包帯を見えた。 「……はぁ……」  包帯を見たら憂鬱になってしまう……  深い溜め息が漏れた。その時 ――……あかん…… 「……!?……」  この場にいないはずの聞き覚えのある声が微かに聞こえたような気がした。 「んな訳ないか……」  聞こえる訳がない……いるわけがないから  そう自分に言い聞かせて、細い路地に入ろうとした時、目の前に不思議な店が…… 「こんな所にこんな店あったか?」  もう長い事暮らしてるけどこんな店今まで見た事がなかった。 「最近出来たんかな……」  深く考えることなく、他の道を探そうと背を向けた。  しかしなぜか後ろの店が気になって仕方なかった……するとカランカランッと扉に付けられているのであろう鐘の音が聞こえた。 その音で振り向いてみると一人の男が佇んでいた。 「少しでも興味があるんやったら入ってみいひん?」  開かれた扉には見られない男が俺に向かって笑みを浮かべていた。 「……はっ?」  何なんだこの人……  いきなり話しかけられ、不信感を抱きながらおもわず険しい表情を浮かべていると気にしていない様子で話し掛けてくる 「そんな険しい顔したらあきませんよ! あっお客さんどうぞっ」  険しい表情を浮かべていたのを指摘され、挙げ句の果てには腕を掴まれ、店の中に半ば無理矢理連れて行かれた。 「えっ!? ちょっと何すんねん!」 「……あんたは、自分の事憎いんやな」 「えっ?」  無理矢理入れられた事に少し苛立ちを覚えて睨み付けようとした時、目の前にいる男の発言におもわず聞き返す 「……ほんま何なんですか? あんた」 「あー、俺の名前は」  ここに書いてあると言って胸に付けられている名札を見せてきた。 「……梶さんですか」 「まぁそうゆう事や……あっ、はよ行き!」  背中を押されて奥へと連れて行かれた。  すると明るい店内で三人の新たな人物が見えた。 「もう何するんですか?」  呆れたように後ろを振り向いて問い掛けてみたが、さっきまでそこにいたはずの梶と呼ばれる男の姿は何処にもなかった。
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